せっかくの聖杯大戦だ。派手に行こうではないか、のう?

セミラミスAssassin of "Red"

CV 真堂 圭

シロウ・コトミネに召喚された「暗殺者」の英霊。
どこか退廃的な雰囲気を漂わせる絶世の美女。

セミラミスAssassin of "Red"

アッシリア帝国に君臨した偉大なる女帝であるセミラミス。世界で初めて「毒殺」という手段で暗殺を敢行した彼女は、「世界最古の毒殺の女帝」としても知られている。その人生は謀略に彩られており、数十年にわたって暴政を布いたが、一方で多数の功績を残した偉大な為政者でもあった。

シリアの魚神デルケトは、ある時女神アフロディーテの怒りを買い、信徒である若者に情愛を抱くという呪いをかけられた。その結果、子を身ごもったデルケトはこれを恥じて、生まれたばかりの赤子を水辺に捨ててしまった。普通ならば赤子はそのまま衰弱死するところだが、その赤子――セミラミスを、鳩たちが守った。その翼で温められ、鳩が運んでくるミルクやチーズで生き延びた彼女は、王室の羊飼いであるシンマスに引き取られ、育てられることとなる。

やがて美しく成長した彼女は、老将軍オンネスに嫁ぐこととなった。年齢はずいぶん離れていたものの、意外にも夫婦仲は良く、仲睦まじかった。セミラミスの明晰な頭脳に支えられたオンネスは、すべてがうまくいっており、妻の才能に惚れ込んでいたという。しかし、その幸せも長くは続かなかった。セミラミスの美貌に魅せられたアッシリア王ニヌスが、自分の娘を与える代わりに彼女を渡すようオンネスに迫ったのだ。王の脅迫と妻への愛の板挟みに苦しんだオンネスは、ついに自害してしまう。

その後、ニヌス王の後宮に入れられたセミラミスは、数々の献策で王を支えた。多方面の教養の深さと頭の回転の速さ、そして比類なき美貌で寵愛を集めたセミラミスは、ニヌス王の正式な王妃となることが決まった。しかし、王妃の座に就いた数日後、セミラミスは夫となったばかりのニノス王を暗殺し、女帝の座に就いた。この事件は「世界最古の毒殺事件」となって伝わっている。セミラミスは最初の夫であるオンネスを愛しており、彼を自殺に追い込んだニノス王へ復讐する機会をずっと伺っていたのである。

権力を手にしたセミラミスの治世は退廃と贅沢を好んだ「暴政」と呼べるものだったが、しかしその一方で、ペルシアとアジアの全領地に都市を築いたり、リビアの大半を征服するなど、施政においても才能を発揮。インドへの遠征が失敗に終わったものの、その治世は数十年にも及んだ。

裏切りと謀略を得手としたセミラミスだが、「聖杯大戦」においてシロウ・コトミネこと天草四郎時貞のサーヴァントとなった彼女は、最後までマスターを裏切ることがなかった。彼の野望が実現するもよし。志半ばで夢敗れる様を見届けるもよし。どちらにしても、夢物語を現実のものにしようと奮闘する天草の姿は、セミラミスに興味深いものとして映ったことだろう。だが、いつしか彼と共に過ごす時間に、心地よさを感じ始めていたのもまた事実。死にゆく天草と、寄り添いながら過ごした最期は、満足すべきものだったのではないだろうか。