その無謀、血で贖うがいい…!

アタランテArcher of "Red"

CV 早見沙織

魔術協会に雇われた魔術師により召喚された「弓兵」の英霊。
英霊としての誇りよりも、野生の本能を優先することができる狩人。

アタランテArcher of "Red"

“赤”のアーチャーことアタランテは、ギリシャ神話で語られる獣の気配と不思議な気品を感じさせる女狩人。ヘラクレスをはじめとするギリシャの勇者を率いたイアソンの「アルゴノーツ」の乗組員として、数々の航海を成し遂げたことでも知られている。

アタランテは自然の楽園アルカディアの王女として生を受けた。しかし、男児を欲していた父王は彼女を疎み、生まれると同時に森に捨ててしまった。これを憐れんだ月の女神アルテミスは聖獣である雌熊を遣わし、アタランテを育てさせた。後に狩人の一団がアタランテを見つけた時は、雌熊に乳を与えられていたという。

その後、狩猟の女神でもあるアルテミスの加護を受けたアタランテは、ギリシャでも並ぶ者なき狩人として成長。勇者として知られるアキレウスの父ペレウスをレスリングで打ち負かしたり、アルテミスが放った巨獣「カリュドーンの猪」退治で最初に矢を射る功績を打ち立てるなど、その名声はギリシャ中に響き渡った。

男顔負けの武勇と、伝説で語られるほどの弓の腕、そして何者にも屈しない気高き精神を持つアタランテだが、子どもに対しては無条件で慈愛を注ぐという一面がある。彼女は幼少期に、両親に愛されることなく育った。胸の奥底にわだかまる寂寥にも似た感情は、やがて「この世すべての子どもたちが愛される世界」を望む想いへと昇華していった。すべての子どもたちは父や母、人々に愛されながら育ち、やがて成長すると自分の子どもを慈しみながら育てる。アタランテが理想とする「愛が循環する世界」の実現は、不可能であることは百も承知。だが、その不可能も聖杯ならば叶えることができるのではないか――。一縷の望みを聖杯に託すため、アタランテは「聖杯大戦」に参戦した。

そんなアタランテにとって、哀れな子どもの怨念で形成された“黒”のアサシン――ジャック・ザ・リッパーは、たとえ怨霊といえども尊び、愛されるべき対象だった。そんな彼女を子供の姿に化けたサーヴァントと認識してマスターと共に殺害した衝撃は計り知れなかった。さらに、分裂した霊体となった子供ジャックたちを無情にも滅ぼしたジャンヌは、いかなる手段を持ってしても打ち倒すべき怨敵となった。そして、アタランテはジャックの残滓を己の右腕に宿し、自らの意思でその呪いに身も心も染められていったのである。

子どもたちへの愛と哀れみは、そのままジャンヌへの怨嗟へと変わった。そしてジャンヌを屠るため、アタランテはかつて彼女が狩ったカリュドーンの猪の毛皮を身にまとってしまった。禁断の宝具「神罰の野猪アグリオス・メタモローゼ」は、美しく気高き女狩人を理性なき魔獣へと堕とし、聖女を追いつめていった。途中でアキレウスがその身を賭して自分を止めてくれなかったら、ジャンヌだけでなくあらゆるものに怨嗟をまき散らす災厄に成り果てていたかもしれない。アタランテ自身にも、他者を呪うことでは子どもたちの魂を救えないことはわかっていた。それでも、子どもたちを切り捨てることでしか救えない世界など間違っているし、彼らを傷つける者は許せなかったのだろう。