手向ける一撃。只それのみで勝負をつけさせてもらう

カルナLancer of "Red"

CV 遊佐浩二

魔術協会に雇われた魔術師により召喚された「槍兵」の英霊。
マスターに対して一切異を唱えることなく、淡々と任務をこなす。

カルナLancer of "Red"

“赤”のランサーことカルナは、両陣営合わせても最高峰の戦闘能力と英霊としての「格」を備えた、破格の大英雄である。

インドの叙事詩「マハーバーラタ」に登場する不死身の英雄であるカルナは、太陽神スーリヤと人間の娘クンティーの間に生まれた。身ごもったクンティーは、生まれてくる子供がスーリヤの息子である証を欲した。そのため、カルナは生まれながらにして、スーリヤと同様の黄金の鎧を身にまとい、耳には耳飾りを着けていた。肉体と一体化して外すことのできない鎧が、カルナを不死の存在たらしめていた。

だがカルナの出産直後、クンティーはクル王パーンドゥの妃となることが決まった。そうなると、未婚のまま生んだカルナはクンティーにとって邪魔者でしかない。すでに子があることが発覚するのを恐れたクンティーは、カルナを箱に詰めて川に流してしまう。しかし、幸いにも御者の夫婦に拾われたカルナは、自らの出自を知らぬまま成長していくこととなる。

自分が生まれつき太陽神と同じ鎧を身にまとっていることから、父はスーリヤであることはわかるが、母の顔を知らない。しかし、彼は恵まれない境遇や母のことを恨むことは一切なかった。自分が今ここに存在するのは、まぎれもなく父と母のおかげ。むしろ、自分は神の子として多くのものを与えられているし、これ以上を望んでは周囲にいる下級階層の人々に申し訳ない。多くのものを持つ自分は父の威光を汚すことがないよう、誰に恥じることのない生き様を示すべきである――。若くして悟りに近い心境に達したカルナは、潔癖で誇り高き道を歩んでいく。

やがて、成長するにつれて武術の才能に目覚めたカルナは、英雄としての資質を示していく。そんな中で、彼は母クンティーが生んだパーンドゥの五兄弟と巡り会う。普段は誰も羨まず、誰も恨まないカルナだったが、五兄弟の三男であり、雷神インドラの子であるアルジュナにだけは強烈なライバル意識を抱いた。アルジュナはやがてカルナにとって終生のライバルとなっていく存在なのだが、出会った時点でその運命を感じ取っていたのかもしれない。

その後、数奇な縁からパーンドゥ家と敵対するカウラヴァ王家に賓客として迎えられたカルナは、領地を巡る両家の戦争に参加。そこで、命を賭けて異父兄弟であるアルジュナと矛を交えることとなった。しかし、2人の戦いは公正なものだったとは言い難い。インドラの奸計によって黄金の鎧を奪われた上、更に数々の呪いや妨害工作によって戦う術を封じられた、最終的にアルジュナによって討ち取られた。それでも、カルナは一言の不平不満を漏らすことなく、すべてを受け入れた。これが自分の運命だったのだと。それどころか、誇り高き戦士であるアルジュナが、自分を討つために不名誉な手段に手を汚したことを、喜ばしく感じていた。アルジュナほどの英雄が、自分のことを、そこまでしないと勝てない相手であると認めていた証左である、と。

どこまでも高潔で、他人の求めに応じてしまうカルナ。そんな彼の「施しの英雄」という呼び名は、苦難の道を粛々と受け入れ、まっすぐ前を見据えて歩んだ生き様を示すにふさわしいものと言えるだろう。