あ、真名言っちゃダメなんだっけ!?

アストルフォRider of "Black"

CV 大久保瑠美

ユグドミレニア一族の魔術師セレニケと契約した「騎兵」の英霊。
天真爛漫、無邪気で享楽的な騎士。

アストルフォRider of "Black"

「ヨーロッパの父」の異名を持つフランク王国の王・シャルルマーニュ(カール大帝)には、有力な12人の聖騎士(パラディン)が仕えていた。その「シャルルマーニュ十二勇士」のひとりとして数々の伝説を残したのが、イングランド王オットーの子・アストルフォである。

筆頭騎士であるローランをはじめとして、幾人もの問題児を抱えている十二勇士の中でも、アストルフォは「理性が蒸発している」と言われるほどのお調子者として知られている。性格はどこまでも破天荒でうっかり者。そして、騎士としての能力が特に優れているわけでもなく、本人も語っている通り、弱い。それでも、アストルフォは幾多の冒険を成し遂げて、数々の武勲を立てている。いかなる難事を前にしても、底抜けの明るさをもって立ち向かっていくという、勇敢な英雄としての資質が彼に幸運をもたらしていたのである。

アストルフォは、生前いくつもの冒険譚を残している。魔女によって木に変えられていた状態から脱して祖国へ帰ったり、残虐な巨人として知られるカリゴランテを倒し、首に縄を付けて引き回して賞賛を得たり、女性の顔を持つ鳥の怪物ハルピュイアの群れを、角笛「恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラック・ルナ)」の一吹きで追い払ったり、とある魔女からあらゆる魔術を打ち破る方法が記された書物「破却宣言(キャッサー・デ・ロジェスティラ)」を手に入れたり……。その道程はどれも困難なものばかりだったが、アストルフォは持ち前の明るさで乗り越え、そのたびに強力な宝具を手に入れていった。

アストルフォの伝説の中で特に有名なのが、失恋のために狂奔した友人ローランのため、月にまで冒険に出向いたエピソードである。アンジェリカという姫君に一目惚れしたローランは、姿を消した彼女を求めるあまり、任務を放棄して捜索の旅に出てしまった。しかし、結局ふられてしまったローランは、悲しみのあまり発狂してしまった。アストルフォは狂奔した友人を慰めるために女装してみるも、まったく効果がない。「この世界では、失われたものは、すべて月へ行く」と聞いたアストルフォは、失われたローランの理性を回収すべく、聖ヨハネから借り受けた「火の馬が引く火の戦車」に乗って月へ向かった。果たして、月には揮発性の液体となった理性が、瓶詰めにされて保管されていた。首尾良くローランの理性を回収したアストルフォは、ついでに自分の理性も回収し、中身を吸い込んでみた。すると“蒸発した”とされていた理性が戻ったのか、地上へ戻った彼は以前とは見違えるほどに聡明な人物になっていたという。ローランも無事に理性を取り戻して事なきを得たものの、しばらくするとアストルフォは以前のように破天荒なお調子者に戻っていた。せっかく取り戻した理性が、再び蒸発してしまっていたのである。

アストルフォの伝説を紐解くと、このように実に彼らしいエピソードであふれている。しかし、彼が誰からも愛されているのは、ただ明るいムードメーカーであるためではない。その根底には、自分が気に入った者のためならば大切なものも快く差し出し、強敵や困難に臆することなく立ち向かっていくという、勇敢な騎士としての精神が根付いているためだ。実力的に周囲の英霊よりも劣り、圧倒的に不利な状況であるにも関わらず、笑顔を見せながら格上の敵に立ち向かっていったアストルフォ。その姿は“勇士”の名にふさわしいものだった。